//はじめに

はじめに

インターネットの普及で、メジャーな音楽とマイナーな音楽の境界線は消滅していくだろうと思われていた。既存のテレビ・ラジオ・雑誌などのメディアが情報をコントロールしきれなくなることで、リスナーの選択肢は分散し、より多くの音楽が聴かれる機会を得ていく展望を描く人も多かった。

しかし現在そのようなことは起こっていない。今でも社会生活の中で多くの人が話題にするメジャーな音楽と、滅多に話題にされることのないマイナーな音楽には大きな知名度の隔たりが存在する。それは結局リスナーの多くが音楽の情報を得ることに受動的であるからかもしれないし、情報が広まっていく過程が変わっただけで多くの人は「メジャーな存在」を潜在的に求めているのかもしれない。むしろ気軽に音楽をストリーミングできるようになったことで、かつてあったマイナー幻想、つまり「マイナーな存在のものこそが格好いい」とする趣向の方が縮小されたように感じられる。

それらは自然なことであり受け容れていくべきことかもしれないが、もう一つの可能性を考えてみる。これまで既存メディアの力を持たなかったインディーズ/アマチュアミュージシャンの活動が可視化されたことで、ここ10年でこれまでとは比較できない母数の音楽が人々の認知しうる範囲に出現した。これは、ライトに音楽を楽しみたい人は勿論、能動的に音楽を探して聴きたい人でもカバーしきれない量で、マイナーな音楽は過剰供給状態になっている。現時点ではその膨大な情報がとっ散らかった状態で、音楽を探して聴きたくてもどこからどう手をつけていけばいいか分からず、現在の音楽シーンに詳しくなる機会を逸している人も多いのではないか?もしこれらの全く整理されていない膨大な情報を上手く拾い、まとめて巨大な樹木のように体系化していくことができれば、興味を持って音楽を探し始める人が増えるのではないか?

現在、一般的に広く認知されているとは言いがたいけれど良いと感じられる音楽、届くべき人の耳に届いて欲しい音楽は数多く点在する。それらを個々の点としてだけでなく、時系列・コミュニティ・音楽性・スタンスなどで線のように繋ぎながら紹介していくことで、音楽を芋づる式に知っていく人が増えることを願い、記事を書いていきたいと思う。

ヒッキーP